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猫見障子 猫見障子

EVENT PRODUCT

障子の向こうにぼんやりと現れる猫があなたに反応して動き出す!
“そこにいる気配”を生み出す体験装置

「猫見障子」は、“そこにいる気配”を生み出す体験装置。障子の向こうにぼんやりと現れる猫があなたに反応して動き出す。たわむれたり、ながめたり、時には気まぐれにあしらわれたり…"気配"と過ごす新しいコミュニケーションがあなたの心に温もりを届ける。

▽詳細はこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000025690.html

STAFF

OVERVIEW

気配とのコミュニケーションを生み出す「猫見障子」は、どのようにつくられたのか

ピラミッドフィルム クアドラ(以下:クアドラ)では、クライアントワークだけでなく、社内から有志を募って制作に取り組む自社開発プロジェクトにも力を入れています。今回ご紹介する「猫見障子」は、2021年に取り組んだプロジェクト。“そこにいる気配”を生み出す体験装置として、障子の向こうにぼんやりと猫が現れ、人の動きに合わせてさまざまに反応します。幕張メッセで開催されたイベント「第1回 XR総合展 秋」に出展した際には、とても多くの反響がありました。この「猫見障子」がどのようなプロセスを経てつくられたのか。制作に携わったメンバーに聞きます。

(左から、町田杏樹、師富玲子、高橋綾乃、鵜飼陽平、圡田紗友里)

メンバー紹介

高橋綾乃
フロントエンドエンジニア
2013年新卒入社。Webを中心に活動しつつ、近年はUnreal EngineやUnityにも挑戦中。実装スタイルはスピード重視。興味の幅が広い文系。

鵜飼陽平
インタラクションデザイナー
2016年中途入社。現状クアドラのプロトタイプを独りで切り盛り。視覚に頼らない体験を模索中。実装スタイルは使えるものはなんでも使う根無草スタイル。右投げ右打ちの右脳派。趣味はサッカー観戦。

町田杏樹
サブプロジェクトマネージャー
2017年新卒入社。Webサイトの制作を中心に、案件全体の進行・クオリティ管理を行う。石橋を叩きまくってしまうタイプ。物事を正しく理解することに重きを置いている。

師富玲子
プロデューサー
2019年新卒入社。1年半、プロジェクトマネージャーとして制作進行を経験し、2年目の下期からプロデューサーを担当。Webに限らず、ARやデバイス、体験系コンテンツの案件を多く担当。難易度の高い案件にもとりあえず挑戦することがモットー。

圡田紗友里
デザイナー
2020年新卒入社。グラフィックデザインを軸に、Web・アプリ・VI等のデザイン制作に携わる。好きなデザインはロゴづくり。

 

体験ハードルを下げて、誰もが楽しめるコンテンツに

━━まずはプロジェクトの発端から伺えますでしょうか?

鵜飼__もう1年前のことなので記憶が若干あやふやなのですが(笑)、確か6月くらいから話し合いがはじまって……。

町田__最初の2カ月くらいは各自でアイデアを持ち寄って、みんなでああでもないこうでもないと揉んでいたんですよね。それでいくつか候補があるなかで「猫見障子」に決まったっていう。

鵜飼__その後、テクスチャの仕様やアニメーションのモデルといった細かい部分に関する検討をはじめて、8月くらいからデザインやプログラミングに移っていきました。

━━数あるアイデアのなかから「猫見障子」が選ばれたのはなぜだったのでしょうか?

鵜飼__過去につくった「もし壁」や「アイパチ!」で体験コンテンツとしてクオリティの高いものがつくれたので、今回は違ったアプローチをしようと。しかも今回は自社開発プロジェクト初参加のメンバーが多かったので、なるべくシンプルな設計にしようと。

師富__その点、「猫見障子」は体験もわかりやすいし、インスタレーションに近い作品になっていると思います。

━━障子の前に立つと猫が現れ、人の動きに合わせてアクションを取る仕様になっていますよね。これはどのような技術が使われているのですか?

鵜飼__センシングといってセンサが人の動きを感知することで、猫が動くようになっています。しかも今回は、モニターの前にすりガラスを1枚かますことでアニメーションのCG感をやわらげていて、よりリアルな雰囲気のある猫を再現できたと思います。

(すりガラス越しに映る猫。人の動作に合わせて動く仕組みになっている)

高橋__猫のアニメーションに関しては、私がそれまで触ったことのなかったUnreal Engineを使って実装することになったので、けっこうドキドキしました。はたして間に合うのか? みたいな(笑)。

ーーとすると、勉強もしたんですか?

高橋__1カ月くらいは準備に費やしました。本当にゼロベースからのスタートだったので、学ぶことが多かったし、スキルアップにつながったと思います。

 

ロゴ、ポスター、リーフレット、ブースと細部にまでこだわったデザイン

ーーでは、デザインはどのように進んでいったのでしょうか?

圡田__まずはロゴを制作するところからはじめて、それからポスターやリーフレットへと展開していきました。企画の肝である“そこにいる気配”をどのようにビジュアル化していくかを試行錯誤し、最終的に猫のシルエットを網点で描くことで、すりガラスによるぼやけと気配を表現しました。障子という和風の題材なので文字は明朝体をベースに、猫の目や肉球など猫要素を盛り込んで完成させています。

ーー最終案以外にも候補があったのでしょうか?

圡田__三毛猫カラーのものや、モチーフと文字を組み合わせたパターンなどいくつか試してみました。そうした末にプロジェクトメンバー間で意見を出し合って決定しています。メンバー全員で意見をすり合わせながらデザインを進めるのが、普段デザイナー同士でレビューし合う流れとは違って刺激になりましたね。

(最終候補となった別案。三毛猫カラーのものや、モチーフと文字を組み合わせたものが残された)

師富__リーフレットも細部まですごく丁寧につくっていましたよね。コンテンツのトンマナを踏まえたうえで多彩なデザインを提案してくれて。クアドラのデザイン力の高さを発信することができたのかなと思います。

圡田__自社開発プロジェクトということもあるので、せっかくだから紙にこだわりたいよねっていう話にデザインチームでなったんです。候補となる紙を何種類か紙屋で購入して、会社で試し刷りをしながら選定しました。

(手作業でつくったリーフレット。初日で配布が完了してしまう嬉しい誤算も)

圡田__中面はすりガラスをイメージしたトレーシングペーパー、表紙は印刷会社に型抜き加工をしてもらって、すりガラスをイメージしたトレーシングペーパーを挟んで、コンテンツと同じように猫が後ろから透けて見えるようなつくりにしました。それを手作業で300部ほど綴じたのですが、トレーシングペーパーへの印刷に苦戦して搬入前日のギリギリまで作業に追われてしまいました(笑)。

高橋__あと、今回は展示会場のブースデザインもこだわれたのがよかったと思います。

師富__これまでは制作した筐体を自分たちのスペースに置くだけということが多かったんですよ。

町田__施工会社とのやりとりは私が担当したのですが、いろいろ勉強になりましたね。こんなに人の導線を考慮しなければいけないんだ、とか。

(展示ブースの風景。会期中は予想を超える数の来場者を集めた)

 

猫という存在のコンテンツ力の高さに驚かされた

ーー会場で「猫見障子」に触れた方々の反応はどうでしたか?

鵜飼__概ね好評だったよね? 

高橋__そうですね。体験してくれた方々の反応は良かったと思います。ただ、個人的には大きなハプニングなく終えられたことが何よりもうれしかったです。最後までずっと不安だったので。

鵜飼__何かしらのトラブルで筐体が動かないことが過去に何度かあったんですよね。それは個人的にもずっと課題で。だから大きな問題が起きなくて本当によかったです。一方で、体験がシンプルすぎるゆえに来場者の方々からどんな反応を得られるのか予想をつけることができないという悩みもありました。蓋を開けてみたら大好評だったので、猫は偉大だなと(笑)。

町田__猫っていうだけであれだけの話題を集めることができるんだっていう気づきがありましたよね。

師富__体験ハードルも低かったから、気軽に楽しんでくれる人が多かった気がします。あとは、ブースをデザインしたことがよかったですよね。結果として、多くの人を呼び込むことに寄与したのかなって。展示会場のなかでも異質な雰囲気を漂わせていたから、来場者の耳目を集めることができたのかなと思います。

町田__ただ、想定以上に来場者が集まってしまうという誤算もありましたよね。猫を1匹しか用意していなかったので、体験できる人数の制限が生まれてしまったのがもったいなかったなと。2匹いたらもっとスムーズな体験を提供できたのかなと反省する部分もあります。

鵜飼__あと、営業する人の数が圧倒的に足りてなかった。

師富__オペレーションは改善するポイントが多かった気がします。今回、初参加のメンバーが多かったので、そこまで頭が回らなかったのもありますが。今後に活かしたいですね。

 

挑戦こそ、自社開発プロジェクトの醍醐味

ーー今回のプロジェクトは学びも多かったと思うのですが、次に向けて考えていることはありますか?

鵜飼__個人的には、もっとアートっぽいことができるといいなと考えています。クアドラにはメディアアートが好きなメンバーも多いので、そういう人たちがアウトプットするための受け皿になればいいなって。クライアントワークではなかなか挑戦できないことに取り組めるのが、自社開発プロジェクトの醍醐味だと思うので。

高橋__自社開発プロジェクトは手を上げた人が参加する方式を採用していることもあり、参加するメンバーが固定化しつつある気がします。だから、もっといろんなメンバーに参加してほしいなと思います。本当に楽しいので。

圡田__企画から細部のつくり込みまで関われるのが楽しいので、今後も自社開発プロジェクトには積極的に参加していきたいです。

ーー師富さんと町田さんはいかがですか?

師富__クライアントワークだと要件や予算が決まっているところからはじまるのですが、自社開発プロジェクトだとゼロからいろいろ決められるし、クアドラってこんな会社なんだっていうアピールにもなるので、もっといろんな技術を試していきたいなって思います。

町田__自社開発プロジェクトに関する情報やノウハウが参加しているメンバーにだけ留まっている現状があるので、これを全社で共有できるようになるといいのかなって。そういう仕組みづくりにも挑戦していきたいですね。

取材・文:村上広大

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