OWNED WORK
だるまオトす だるまオトす
口説いて落とす全く新しい音声会話型だるま落としゲーム
誰もが知る日本の伝統的な玩具「だるま落とし」を、デジタルの力で全く新しいゲームへアップデート。従来の「叩いてオトす」フィジカル的体験から、「口説いてオトす」というメンタル的体験へと変更することで、インタラクティブなコンテンツへと昇華。音声認識機能で体験者の様々な言葉を判別したり、距離センサーで体験者と筐体との距離を感知したり、表情認識用カメラで対話中の表情を解析したりと、自然で自由度の高いコミュニケーション設計を目指した。
HOW IT WORKS
STAFF
OVERVIEW
各種センサーを搭載! コミュニケーション型「だるま落とし」を実現
「だるまオトす」は、音声認識、表情による感情検出、ユーザーと筐体との距離計測など各種センサーをだるま自身や筐体、だるまを落とす木槌に搭載した、まったく新しいだるま落とし。「オトす」には、物理的な落下(叩いて落とす)と心理的な変容(口説き落とす)の二重の意味が込められている。
企画/開発のきっかけは、デジタルクリエイティブイベント「dotFes(ドットフェス) 2017」の展示依頼を受けて。「わかる人にわかればいい」というようなマニア向けの技術推しコンテンツではなく、技術には興味のない多くの一般の方が楽しめる「体験」を提供した。
「ユーザーがとっかかりやすいように親しみや懐かしさを感じさせながら、“やったことがない”という好奇心を呼び起こせる“体験”(伝統+技術=アップデート版だるま落とし)を目指したのです」(阿部)
1つのステップを経るごとに、だるまが1段落とされていく
「口説いて落とす」設定へと自然と没入していく企画
デジタル領域のプロフェッショナルではない来場者も多いイベントなので、誰にとってもわかりやすい体験にしたい。そこで着目したのが「だるま落とし」。
「一案には“じゃんけん”なども出てきたり、世代を問わず知られた遊び方ほど誰もが参加しやすい。誰もが知っている体験に、これまでになかった要素を掛け合わせることで、新しくも普遍的に面白さを感じられる体験にできるのではと考えました」(阿部)
企画を深める中で頭を悩ませたのが、「口説き落とす」設定を自然に演出すること。口説き落とす行為は、本来能動的。筐体側の指示に従って進行する受動的な体験でありつつも、ユーザーには能動的に口説いているように感じさせなければならない。今回はだるまとユーザーとのコミュニケーションは、3ステップに設定。 たびたびのトライアンドエラーを繰り返しながら、「利用者が能動的に口説くありよう」「負荷の少ない楽しい利用者体験の実現」を模索。徹底した模索の先に、だるまをツンデレ女、俺様男というキャラクターに設定する「知恵」が生まれた。
「だるまの性格をツンツンしたキャラクターにすることで、体験者がだるまに口説くようにお願いされているのではなく、だるまが突っかかってきているのに応えている行為が、自然と告白している流れになっている。という体験に感じさせられると判断しました」(阿部)
だるまの感情を示すフェイスモニターは体験者の話す言葉によって表示が変わる
各種センサーで感性をユーザーが納得できるように設定
開発の難しさは、人それぞれで異なる“感じ方”をどう判定させるか。人それぞれが持つ感覚の差異を、最大公約数の納得感が得られる折り合いで実装する必要があるからだ。例えば、ハンマーマイク(ユーザー)と筐体(だるま)との距離で解説すると……
「人によって、物理的な距離の近い/遠いと、心理的な近い/遠いは違います。離れているけれど、気持ちは近いみたいなことがあるし、人と人の関係(口説く関係)を単純に物理的な距離へと置き換える無理について、エンターテインメント性を尊重しながらイベントの性格や、体験される方の層を勘案して調整しています」(岩崎)
「各種センサーの精度は、企画段階での想定や目標と、実際の判定では齟齬が出てきます。多くの人たちに実際に体験をしていただいた結果や、開発者のトライアンドエラーを通じて齟齬を埋めながら、実際に体験されるユーザーが違和感を抱かない設定を探り当てることが、だるまオトすの生命線。開発側の腕の見せどころです」(鵜飼)
相手(ダルマ)に「好き」という気持ちを伝える(口説き落とす)言葉もしかり。
「あの手この手、多種多様な告白(言葉)に対応できるように、“好き”に関連する洗い出したワードを事前登録。体験者が“こんな言葉まで理解できるの?どうやってるの?”と思える状態を用意しました」(阿部)
かつて夏目漱石が訳したとされる、「I love you」の翻訳「月が綺麗ですね」にも対応! 突飛な言葉にも対応できる工夫が、さりげない強み?!
エンターテインメントだけでなく、ソリューションとしての「サービス」に昇華
企画から開発までの目安は、一カ月半。「だるまオトす」が提示するフレームワークは、筐体(だるま)に各種センサー(音声、距離、表情などの所作)を搭載し、複数の設問を通じてユーザーが受け答え(コミュニケーション)する、という「仕組み」。設定や条件を変えれば、違った遊びやソリューションの提供に応用できる。
「今回はキャラクターに合わせた言葉を開発チームで選定し、1万語以上を辞書化するという選択をしました。用途によっては、AIを利用して文脈などに基づく判断も開発可能です」(岩崎)
口説いて“落とす”設定を踏まえても、「だるま」を職場の「上司」や「取引先相手」に置き換えた接待場面、面接官に置き換えての採用場面のトレーニング、自社商品を売り込むための営業訓練などは、実現可能な分かり易い横展開例だ。
「口説き落とす条件に限らなければ、汎用性はもっと広がります。本体を先生に置き換えての教育コンテンツ、新商品の理解促進を狙ったサービスなど、ユーザーの心理/態度変容を促すサービス体験も提供できます」(阿部)
「だるまオトす」及びそのフレームワークは、「利用者の印象に残る体験」を求める事業主やマーケター、自治体も含めた企画担当者の慧眼にかなう「サービス」をもたらすはずだ。
Interview / Text : Yoshihiro Endo
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